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あわてふろしき

あわてふろしき

江戸小話

むかしの寺では、魚や肉を食ベてはいけない事になっていました。

さて、寺男てらおとこ(てらおとこ→お寺おてら雑用ざつよー係)の太作たいさく(たすけ)は急ぎ足いそぎあし帰っかえってくると、台所だいどころにいた和尚おしょーさんに言いいいました。

和尚おしょーさま。今さっき、珍しい物をてまいりました」

「ふむ、そりゃ、何じゃな?」

太作たいさくはニヤッと笑っわらって、言いいいました。

「はい。横町よこちょー魚屋さかなやに、和尚おしょーさまの大好きだいすきなタコがございました」

タコと聞いきいて、和尚おしょーさんはあわてて口に人差し指ひとさしゆびをあてて、

「しっ!」

と、太作たいさくをしかりつけてから、小さな声で言いいいました。

「大きな声で、何て事を言ういうんじゃ! あれはな、タコと言うゆうてはならん」

「へい。では、何て言えいえば」

「あれは手が八本あるから、八手やつで(やつで)と言ういうのじゃ。誰もおらなんだから、よかったものの。・・・して、その八手やつでがどうした?」

「はい、そのタコ、いや、その八手でございますが、それがまた、えらく大きな奴で」

「ふむ、大きかったか。それは良い事じゃ。あれは、大きいほど味がよいからのう。・・・して、そいつの頭は、どれほどじゃ?」

「はい。それは、その・・・」

太作たいさくはあちこち見回しみまわして、和尚おしょーさんの頭を指さしゆびさしました。

「そうそう、ちょうど和尚おしょーさまの、その頭ほどで」

それを聞いきい和尚おしょーさんは、ごくりとつばを飲み込みのみこみました。

「ほほう。この頭ほどあったか。なるほど、それは大きいわい。してその八手やつでは、古いか? 新しいか?」

「はい、新しゅうございます」

「よし、では、さしみで食べるたべるか。して、色つやいろつやはどうじゃ?」

「はい。和尚おしょーさまの、そのお顔の様に赤うございました」

「なるほど、なるほど。そいつはうまそうじゃ。では人に知れんしれんように、買うかうてきてくれ」

「はい」

二人は顔を見合わせみあわせて、ニヤリと笑いわらいました。

ちょうどその時、ガラリと台所だいどころの戸が開いひらいて、

和尚おしょーさま」

和尚おしょーさまは、おいでか?」

と、壇家(だんか→むかしから、そのお寺おてら付き合いつきあいのある家の人)の者が二、三人やってきました。

ハッと思っおもっ寺男てらおとこは、急いいそいでそばにあったふろしきを広げるひろげると、和尚おしょーさんの頭にすっぽりとかぶせて、

八手やつでは、留守じゃ。八手やつでは、留守じゃ」

と、言っいったそうです。

♪ちゃんちゃん

(おしまい)


寺男
てらう
お寺
雑用
太作
たすける
急ぎ足
帰る
台所
和尚
言う
見る
ニヤッ
笑う
横町
魚屋
大好き
ござる
聞く
あわてる
人差し指
あてる
しかりつける
八手
そいつ
あちこち
見回す
指さす
飲み込む
食べる
色つや
知れる
買う
見合わせる
開く
おいで
付き合い
やってくる
思う
急ぐ
ふろしき
広げる
かぶせる

: N1

: N2

: N3

: N4

: N5

muksi, kanayomi

「今日は何の日?」

20211028

元:地球くん

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