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幽霊の頼み

幽霊の頼み

百物語

むかしむかし、大阪おーさか上本かみほん町(うえほんまち)に、夜になると若い女の幽霊ゆーれい現れあらわれて、道行くみちゆく人々ひとびと追いかけるおいかけるという噂がたちました。

ある夜ふけよふけの事、十作(じゅっさく)という侍が五平ごへい(ごへい)というお供おとも連れつれ歩いあるいていると、

「お待ちください、お待ちください」

と、後ろうしろから呼び止めるよびとめる声がしました。

声は若い女の様ですが、十作が振り向いふりむいても五平ごへいしかいません。

「はて、おかしいな? 誰もおらぬぞ。・・・五平ごへいお前おまえには聞こえきこえなかったか?」

すると五平ごへいは、恐ろしそうにブルブルと震えふるえながら答えこたえました。

「はい、聞こえきこえました。うらめしそうな、女の声です。これは町の者たちが噂をしている

幽霊ゆーれい

(ゆうれい)かもしれません」

「うむ。声はすれども、姿は見えみえぬか。幽霊ゆーれいなら一度てみたいが、どうやら、わしの様な田舎いなか侍には、幽霊ゆーれいも姿を見せみせぬのだろう」

十作はそんな冗談じょーだん言いいいながら、また夜道よみち歩きあるき出しました。

「お待ちください、お待ちください」

また、呼ぶよぶ声が聞こえきこえます。

十作が再び振り返るふりかえると、今度こんどは道の真ん中まんなかに、二十歳ぐらいの女の人が立ったっていました。

顔は青ざめあおざめて髪を乱しみだしており、腰から下は暗くてよく見えみえません。

十作は平気へいきでしたが、五平ごへい驚いおどろいてすぐに十作の後ろうしろ隠れかくれました。

十作は、腰の

に手をかけながら言いいいました。

「お主、何の用があって呼び止めるよびとめるのじゃ? ・・・動くうごくな! それより近くちかく寄れよれば、切り捨てるきりすてるぞ!」

すると、女の幽霊ゆーれい答えこたえました。

「お待ち下さい。

わたしは、この近くちかくの者です。

あるお店の

旦那だんな

さまと恋仲こいなかになりましたが、その旦那だんなさまの奥方おくがた(おくがた→奥さんおくさん)にうらまれて殺さころされたのです。

夜ごとこの辺りあたり歩いあるいては人を呼ぶよぶのですが、みな、わたしを見るみる逃げにげてしまいます。

でも、あなたさまは足を止めとめてくださり、うれしゅうございます。

どうか、わたしの力になってください」

幽霊ゆーれいの目から、いくすじも涙がこぼれています。

「うむ。話は分かっわかったが、力になってくれとはどういう事じゃ?

まさかわしに、その奥方おくがたへ仕返しをしてくれと言ういうのではなかろうな。

そんな事は、ごめんこうむる」

「・・・・・・」

図星ずぼしか。

悪い事は、言わいわぬ。

もう誰も、うらまない方がよい。

仕返しをしても、うらみを持つもつ者を増やすふやすだけだ。

・・・しかしまあ、ここで出会っであったのも何かの縁。

わしがそなたをねんごろにとむらってやるから、うらみごとは忘れわすれて成仏するといい」

十作が言ういうと、女の幽霊ゆーれいはうなづきました。

「わかりました。

うらみは、忘れるわすれる事にします。

けれどもその前に、お頼みたのみしたい事があるのです。

実はわたしのお腹おなかには、子が宿っやどっております。

わたしは死んしんでいるのに、お腹おなかの子がどんどん大きくなり、苦しくてなりません。

どうかその刀で、わたしのお腹おなか切り裂いきりさいて、お腹おなか子どもこども出しだしてほしいのです」

「なんと・・・」

さすがの十作も、これには驚きおどろきました。

幽霊ゆーれいの腰から下は暗くてよくはわかりませんが、そう言わいわれれば、なんとなくお腹おなか辺りあたり膨らんふくらんでいるようにも思えおもえます。

「いくら幽霊ゆーれいとはいえ、そんな事は、わしには出来できぬ」

十作は断ることわると、そのまま立ち去ろたちさろうとしました。

すると幽霊ゆーれいは、それこそうらめしそうな声で言いいいました。

お腹おなか切り裂いきりさいてくださらねば、わたしは永遠えいえん苦しむくるしむ事になります。そうなればいつまでも、あなたさまをおうらみしますよ」

身の上みのうえ聞いきいてやったのにうらまれるとは、これこそ逆うらみです。

十作は腹が立ちたちましたが、でも永遠えいえん苦しむくるしむのは確かたしか気の毒きのどくです。

「・・・よかろう。その願いねがいを、かなえてやろう」

十作は決心をすると、脇差しわきざし抜いぬい幽霊ゆーれい半分はんぶん見えみえないお腹おなか辺りあたり当てあてました。

そして脇差わきざし切っ先きっさき突きつき入れるいれると、ぐいと横に引きひきました。

わずかに水を切るきる様な手ごたえてごたえ感じかんじましたが、幽霊ゆーれいお腹おなかからは血もないので切っきった気がしません。

(これでよいのか?)

すると幽霊ゆーれいが、ほっとした顔でお礼を言いいいました。

「ああ、ありがとうございました。これですっかり、楽になりました」

そして幽霊ゆーれいは、かき消すかきけす様に消えきえました。

「うむ、成仏せいよ」

十作は刀をしまうと、まだ震えふるえている五平ごへい連れつれて家へと帰りかえりました。

その後そのご、十作がこの道を通るとーる事はありませんでしたが、幽霊ゆーれいはすぐには成仏出来できなかったのか、次の夜から元気げんきの良い赤ん坊あかんぼー泣き声なきごえと、その子をあやす若い女の声が何年も聞こえきこえたという事です。

おしまい


大阪
上本
幽霊
現れる
道行く
人々
追いかける
夜ふけ
五平
お供
連れる
歩く
後ろ
呼び止める
振り向く
お前
聞こえる
震える
答える
しれる
見える
見る
田舎
見せる
冗談
言う
夜道
呼ぶ
振り返る
今度
真ん中
立つ
青ざめる
乱す
平気
驚く
隠れる
かける
動く
近く
寄る
切り捨てる
旦那
恋仲
奥方
奥さん
うらむ
殺す
辺り
逃げる
あなた
止める
こぼれる
分かる
こうむる
図星
うらみ
持つ
増やす
出会う
とむらう
忘れる
うなづく
わかる
頼む
お腹
宿る
死ぬ
切り裂く
子ども
出す
膨らむ
思える
いくら
出来る
断る
立ち去る
永遠
苦しむ
身の上
聞く
確か
気の毒
願い
かなえる
脇差し
抜く
半分
当てる
脇差
切っ先
突く
入れる
引く
切る
手ごたえ
感じる
出る
かき消す
消える
しまう
帰る
その後
通る
元気
赤ん坊
泣き声
あやす

: N1

: N2

: N3

: N4

: N5

muksi, kanayomi

「今日は何の日?」

2021613

元:地球くん

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